家賃が入らない。焦って鍵を替えたくなる——その行為が、管理業者を加害者に変えます。自力救済の禁止と、適法な督促の作法を学びます。
ねえ先生、家賃を何か月も払わない人がいたら、鍵を替えちゃえばよくない? 貸してるのは大家さんなんだし。
ジャスミンさん、そこで手を止めて。
それは絶対にやってはいけないの。自力救済の禁止——法律に基づく手続によらずに自分の力で権利を実現することは、原則として許されないわ。
うぅ…先生がそんなに真剣な声出すの、めずらしい。
えっ、大家さん側なのにダメなの?
賃借人が滞納していても、契約が続いている以上、その部屋を使う権利は賃借人にあるの。
無断で鍵を交換する、玄関に張り紙をする、家財を運び出す、電気や水道を止める——どれも違法。
不法行為として損害賠償責任を負う可能性がありますね。
……ジャスミンちゃん、その発想は管理業者としては一発退場だよ。
張り紙も? 『家賃を払ってください』って書くだけでも?
近隣の目に触れる形で滞納を知らせるのは、名誉やプライバシーを侵害しうるわ。
契約書に『滞納したら鍵を交換してよい』と書いてあっても、そういう特約は無効と考えられているの。
特約でもダメ…。
じゃあ、こっちは何ができるのさ?
できることはあるわ。
段階を踏むの。
まず電話や訪問での確認、次に督促状、それでも支払われなければ内容証明郵便で正式に催告する。
並行して連帯保証人にも早めに連絡しておくのが実務よ。
早期に、段階的に。
放置して滞納額が膨らむほど、賃借人も払えなくなって回収は難しくなりますし。
でも…督促のやり方にも、やさしさが要る気がする。
夜中に何度も電話が鳴ったら、わたしなら息が詰まっちゃう。
ましろさん、それも立派な論点よ。深夜・早朝の連絡、勤務先への執拗な連絡、第三者への告知——私生活の平穏を害する取立ては避けなければならない。
適法な範囲で、粘り強く、冷静に。
それが管理業者の仕事なの。
…鍵を替えるのって、その場は楽だけど、結局こっちが訴えられる側になるんだね。
わかった、覚えとく。
確認クイズ
賃料を滞納している賃借人への対応として、適法なものはどれか。
- 賃借人に無断で玄関の鍵を交換し、室内に立ち入れないようにする
- 電気・水道の供給を止めて、任意の退去を促す
- 内容証明郵便により、期間を定めて賃料の支払を催告する
- 玄関ドアに滞納の事実を記載した張り紙をして支払を促す
こたえを見る
正解: 3. 内容証明郵便により、期間を定めて賃料の支払を催告する
正解は選択肢3です。内容証明郵便による催告は、法律に基づく正当な手続の一環であり適法です。選択肢1・2・4はいずれも自力救済にあたり違法で、不法行為として損害賠償責任を負うおそれがあります。特に選択肢4は、近隣に滞納の事実を知らせることになり、名誉・プライバシーの侵害にもなりえます。