任意の督促で解決しないとき、法は複数の道を用意しています。支払督促、少額訴訟、通常訴訟、民事調停。そして明渡しと強制執行までの流れを追います。
督促しても払われない。
次は法的手続よ。
まず出発点は、内容証明郵便で相当の期間を定めて催告し、それでも履行がなければ契約解除の意思表示をする——ここは押さえてね。
補足すると、解除には信頼関係の破壊が必要とされていますよね。
1か月の滞納で即解除、とはいかないはずです。
そのとおり。信頼関係破壊の法理ね。
一般には3か月程度の賃料滞納が、解除が認められるかどうかの一つの目安とされているわ。
よっしゃ、じゃあ3か月たったら裁判! …で、裁判って一種類じゃないの?
いくつもあるのよ。
まず支払督促。
簡易裁判所の書記官に申し立てる手続で、相手方の言い分を聞かずに支払を命じてくれる。
安くて早いのが利点ね。
相手の話を聞かないで決まっちゃうの…? それはさすがに、相手にも言い分があるんじゃ…
だから逃げ道が用意されているの。
相手方が2週間以内に督促異議を述べれば、事件は通常訴訟に移行するわ。
異議が出れば、結局きちんと審理されるのよ。
もう一つ、少額訴訟という選択肢もありますね。
金額が小さい場合の簡易な手続だと聞きました。
60万円以下の金銭の支払を求める場合に使えて、原則として1回の期日で審理を終えて判決が出る。
ただし同一の簡易裁判所で年10回までという制限があるわ。
60万円以下。
……あれ、じゃあ『出ていってもらう』のは少額訴訟でできないよね? お金じゃないもん。
よく踏み込んだわね。
少額訴訟は金銭の支払請求専用。
建物の明渡しを求めるなら、建物明渡請求訴訟という通常の訴訟を起こすことになるの。
話合いで解決を図る民事調停という道もあるわ。
判決が出たら、その日から入れ替わりで出ていってくれる…わけじゃないんだよね?
残念ながらね。
判決が出ても、任意に出ていかなければ強制執行——明渡しの断行を裁判所に申し立てることになる。
執行官が現場で明渡しを実施するのよ。
ここでも、勝訴判決があっても自分で追い出すことはできない。
解除から明渡しの完了まで、時間もお金もかかる。
だからこそ前の記事の『早期発見・早期着手』が効いてくるんですね。
確認クイズ
少額訴訟に関する記述として、正しいものはどれか。
- 請求額が100万円以下の金銭の支払を求める場合に利用できる
- 60万円以下の金銭の支払を求める場合に利用でき、原則として1回の期日で審理を終えて判決が言い渡される
- 建物の明渡しを求める請求についても利用することができる
- 同一の簡易裁判所における年間の利用回数に制限はない
こたえを見る
正解: 2. 60万円以下の金銭の支払を求める場合に利用でき、原則として1回の期日で審理を終えて判決が言い渡される
少額訴訟は60万円以下の金銭の支払請求に限って利用でき、原則として1回の期日で審理を終えます。選択肢1は金額が誤りです。選択肢3は誤りで、少額訴訟は金銭の支払請求専用であり、建物明渡請求には利用できません。選択肢4も誤りで、同一の簡易裁判所での利用は年10回までに制限されています。