債務不履行があれば解除できる——民法の原則はそうですが、賃貸借では判例が大きな修正を加えています。
先生、家賃を1回うっかり忘れたら、すぐ追い出されちゃうの?
そうはならないわ。
落ち着いて。
まず民法541条の原則から確認しましょう。
相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときは解除できる——催告解除ですね。
そう。
原則は催告が必要。
しかも不履行が軽微であるときは解除できません。
でも、住むところって特別な気がする…同じ物の売り買いと同じでいいのかなぁ。
ましろさん、まさにそこ。
判例は賃貸借について信頼関係破壊の法理を確立しました。
賃借人の債務不履行が、賃貸人との信頼関係を破壊するに至る程度でなければ、解除は認められない——という枠組みですね。
そのとおり。
1〜2か月の滞納で直ちに信頼関係が壊れたとは通常評価されません。
実務では3か月以上の滞納が一応の目安とされるけれど、最終的には個別事情の判断よ。
よかったぁ…。
あれ、でも待って。
それって逆もあるってこと?
鋭いわ。
信頼関係が破壊されたと認められる場合には、無催告解除も認められうる、というのが判例の立場です。
両方向に効く道具なのですね。
無催告解除特約についても、判例は無制限に有効とはしていませんでしたよね。
ええ。
催告をしなくてもあながち不合理でない事情がある場合に限って有効、と解されています。
特約さえあれば何でも即解除、ではないの。
要は、壊れたかどうかを見るってこと? ハンコの数じゃなくて。
ふふ、いい言い方ね。
最後に効果。
民法620条により、賃貸借の解除は将来に向かってのみ効力を生じます。
遡及効はありません。
使ってしまった過去の使用収益を巻き戻せないからですね。
損害賠償請求は妨げられない、と。
過去は消えないけど、これから先は止められる…。
なんだか、しみじみするね。
確認クイズ
建物賃貸借の解除に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 賃料の不払いを理由とする解除は、原則として相当の期間を定めて催告をしたうえで行う必要がある。
- 賃借人の債務不履行が賃貸人との信頼関係を破壊するに至る程度でない場合、解除は認められない。
- 賃貸借契約の解除には遡及効があり、契約は当初に遡って効力を失う。
- 信頼関係が破壊されたと認められる場合には、催告をしないで解除することも認められうる。
こたえを見る
正解: 3. 賃貸借契約の解除には遡及効があり、契約は当初に遡って効力を失う。
誤っているのは選択肢3です。民法620条により、賃貸借の解除は将来に向かってのみ効力を生じ、遡及効はありません。選択肢1は民法541条の原則として正しく、選択肢2および選択肢4は信頼関係破壊の法理に関する判例の考え方として正しい記述です。