負担区分で「賃借人負担」と決まっても、話は終わりません。いくら払うのか——ここに経過年数という第二のものさしが登場します。
壁紙を汚しちゃったら、張り替え代は全額あたし持ち? 新品の壁紙を買うお金を払うって、なんか損した気分…。
そこで経過年数の考え方が出てくるの。
賃借人負担の損耗であっても、その部分にはすでに経年変化や通常損耗が含まれている。
だから年数が経つほど負担割合を減らすのが原則。
クロスやカーペットは耐用年数6年とされ、残存価値1円まで直線的に減価する、という理解で合っていますか。
合っています。
入居3年目なら負担はおよそ半分。6年住めばクロスの価値は1円まで下がります。
マジで!? 6年住んだら、壁紙を汚しても1円しか払わなくていいの?
そこは注意が要るわ。1円まで下がるのは材料の価値であって、故意・過失の程度が大きい場合——たとえば落書きのような場合には、補修費用の全額を負担させることもあるとされています。
ふぇぇ〜、わざとやったら年数は言い訳にならないんだ…。
先生、逆に経過年数を考慮しないものもありますよね。
そこを整理したいです。
大事な論点。
まずフローリングの部分補修。
部分的な補修なので経過年数は考慮せず、その補修費用を負担します。
ただしフローリング全体の張替えとなれば、建物の耐用年数を用いて計算する。
…ましろが思うに、部分補修って「傷を直すだけ」で、新品に生まれ変わるわけじゃないよね。
得してないから、割り引く理由もない…のかな?
ふふ、いい線を突いています。
部分補修は建物の価値を新品に戻すものではないから、減価の調整になじまない。
全体の張替えなら価値が更新されるので、耐用年数で調整するの。
同じ理由で、畳表の表替え、襖紙、障子紙も消耗品的な性格が強く、価値の減少がもともと予定されていないものだから、経過年数を考慮しません。
さらに——設備の交換、鍵の交換、ハウスクリーニングも考慮しない。
うぅ、覚えることが増えた…。
考慮する・しないの表、作らなきゃ。
最後に施工単位の話。
原則は毀損部分の補修。
クロスなら㎡単位が基本です。
でも、1㎡だけ新しい壁紙にしたら、そこだけ色が浮いちゃわない?
だからガイドラインは、色合わせや模様合わせの必要から、毀損箇所を含む一面までは賃借人負担としてもやむを得ない、としています。
部屋全体ではなく、あくまで一面まで。
「一面までは許容されうるが、部屋全体には及ばない」——ここは境界線として明確に押さえます。
確認クイズ
原状回復における経過年数の考え方に関する記述として、誤っているものはどれか。
- クロスは耐用年数6年、残存価値1円として、経過年数に応じて賃借人の負担割合を減少させる。
- 畳表の表替えや襖紙の張替えは、消耗品的な性格が強いことから、経過年数を考慮しない。
- ハウスクリーニング費用や鍵の交換費用についても、経過年数に応じて賃借人の負担割合を減少させる。
- 経過年数を考慮する場合でも、賃借人の故意・過失の程度が大きいときは、補修費用の全額を負担させることがある。
こたえを見る
正解: 3. ハウスクリーニング費用や鍵の交換費用についても、経過年数に応じて賃借人の負担割合を減少させる。
誤っているのは選択肢3です。ハウスクリーニング・鍵の交換・設備の交換は、経過年数を考慮しないものとされています。選択肢1・2・4はいずれも正しい記述です。なお、フローリングは部分補修であれば経過年数を考慮せず、全体の張替えの場合に建物の耐用年数を用います。