経過年数の考え方と施工単位 — 6年住めばクロスは1円

賃借人が負担すべき損耗でも、全額を払うとは限りません。経過年数に応じて負担割合が減っていく一方、経過年数を考慮しないものもあります。この線引きが最頻出です。

編集・検証: 賃貸不動産経営管理士スタディ編集部 公式情報: 一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会 制作・検証方針

負担区分で「賃借人負担」と決まっても、話は終わりません。いくら払うのか——ここに経過年数という第二のものさしが登場します。

戸倉 ジャスミン(しょんぼり) 戸倉 ジャスミン

壁紙を汚しちゃったら、張り替え代は全額あたし持ち? 新品の壁紙を買うお金を払うって、なんか損した気分…。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

そこで経過年数の考え方が出てくるの。
賃借人負担の損耗であっても、その部分にはすでに経年変化や通常損耗が含まれている。
だから年数が経つほど負担割合を減らすのが原則。

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

クロスやカーペットは耐用年数6年とされ、残存価値1円まで直線的に減価する、という理解で合っていますか。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

合っています。
入居3年目なら負担はおよそ半分。6年住めばクロスの価値は1円まで下がります。

戸倉 ジャスミン(びっくり) 戸倉 ジャスミン

マジで!? 6年住んだら、壁紙を汚しても1円しか払わなくていいの?

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

そこは注意が要るわ。1円まで下がるのは材料の価値であって、故意・過失の程度が大きい場合——たとえば落書きのような場合には、補修費用の全額を負担させることもあるとされています。

雪村 ましろ(びっくり) 雪村 ましろ

ふぇぇ〜、わざとやったら年数は言い訳にならないんだ…。

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

先生、逆に経過年数を考慮しないものもありますよね。
そこを整理したいです。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

大事な論点。
まずフローリングの部分補修。
部分的な補修なので経過年数は考慮せず、その補修費用を負担します。
ただしフローリング全体の張替えとなれば、建物の耐用年数を用いて計算する。

雪村 ましろ(普段) 雪村 ましろ

…ましろが思うに、部分補修って「傷を直すだけ」で、新品に生まれ変わるわけじゃないよね。
得してないから、割り引く理由もない…のかな?

香月 リサ 先生(笑顔) 香月 リサ 先生

ふふ、いい線を突いています。
部分補修は建物の価値を新品に戻すものではないから、減価の調整になじまない。
全体の張替えなら価値が更新されるので、耐用年数で調整するの。

同じ理由で、畳表の表替え、襖紙、障子紙も消耗品的な性格が強く、価値の減少がもともと予定されていないものだから、経過年数を考慮しません。
さらに——設備の交換、鍵の交換、ハウスクリーニングも考慮しない。

戸倉 ジャスミン(うるうる) 戸倉 ジャスミン

うぅ、覚えることが増えた…。
考慮する・しないの表、作らなきゃ。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

最後に施工単位の話。
原則は毀損部分の補修。
クロスなら㎡単位が基本です。

雪村 ましろ(普段) 雪村 ましろ

でも、1㎡だけ新しい壁紙にしたら、そこだけ色が浮いちゃわない?

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

だからガイドラインは、色合わせや模様合わせの必要から、毀損箇所を含む一面までは賃借人負担としてもやむを得ない、としています。
部屋全体ではなく、あくまで一面まで。

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

「一面までは許容されうるが、部屋全体には及ばない」——ここは境界線として明確に押さえます。

確認クイズ

原状回復における経過年数の考え方に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. クロスは耐用年数6年、残存価値1円として、経過年数に応じて賃借人の負担割合を減少させる。
  2. 畳表の表替えや襖紙の張替えは、消耗品的な性格が強いことから、経過年数を考慮しない。
  3. ハウスクリーニング費用や鍵の交換費用についても、経過年数に応じて賃借人の負担割合を減少させる。
  4. 経過年数を考慮する場合でも、賃借人の故意・過失の程度が大きいときは、補修費用の全額を負担させることがある。
こたえを見る

正解: 3. ハウスクリーニング費用や鍵の交換費用についても、経過年数に応じて賃借人の負担割合を減少させる。

誤っているのは選択肢3です。ハウスクリーニング・鍵の交換・設備の交換は、経過年数を考慮しないものとされています。選択肢1・2・4はいずれも正しい記述です。なお、フローリングは部分補修であれば経過年数を考慮せず、全体の張替えの場合に建物の耐用年数を用います。

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