前回の原則を、いよいよ具体例に落とし込みます。似て見える損傷でも、結論が正反対になることがあります。
ガイドラインは損耗を区分しています。
基本は二つ。A区分は、賃借人が通常の住まい方をしていても発生すると考えられるもの——つまり通常損耗・経年変化で、賃貸人負担。
B区分は、賃借人の住まい方・使い方次第で発生したりしなかったりするもの。
明らかに通常の使用の結果とはいえない損耗で、賃借人負担ですね。
そのとおり。
そしてこの二つに、調整のパターンが二つ重なります。
一つは、基本はAなのに、賃借人の手入れや管理が悪くて損耗が発生・拡大したケース。
これは賃借人に負担が回ります。
もう一つは、修繕に建物の価値を増大させる要素——いわゆるグレードアップが混ざっている場合。
その分まで賃借人に払わせるのは行き過ぎだから、賃貸人が負担して調整します。
うぅ〜ん…言葉だと分かった気になっちゃう。
具体例、ほしいなぁ。
いきましょう。
まず賃貸人負担の代表例。
家具の設置による床のへこみや設置跡。
日照など自然現象によるクロスや畳の変色。
テレビ・冷蔵庫の裏の壁が黒ずむ電気ヤケ。
そして画鋲・ピンの穴。
えっ、画鋲の穴っていいの!? ポスター貼りまくってたら怒られると思ってた。
画鋲やピンの穴は、通常の生活で行われる範囲のものであり、下地ボードの張替えまでは不要ですからね。
……ただし、釘穴・ネジ穴は別だと理解しています。
そこが分岐点。
釘やネジの穴で下地ボードの張替えが必要な程度のものは、通常の使用を超えるとして賃借人負担。
同じ「壁の穴」でも深さが結論を変えるの。
…あ、そっか。
壁紙だけで済むか、その奥まで壊れてるか、なんだね。
ええ。
今度は賃借人負担の代表例をまとめて言うわ。
タバコのヤニ・臭い。
結露を放置して広がったカビやシミ。
ペットによる柱の傷や臭い。
掃除を怠った台所の油汚れ、水回りの水垢。
結露って、建物のせいじゃないの? あたし、なんか納得いかない…。
結露そのものは建物の構造に起因することもあります。
でも、それを放置してカビやシミを拡大させたなら、そこは賃借人の管理の問題だよ。
つむぎさんの整理が的確ね。
ガイドラインも、賃借人が結露を発見しながら賃貸人に通知もせず、拭き取りなどの手入れも怠った場合を賃借人負担としています。放置したかどうかが鍵。
気づいてたのに何もしなかった——それは通常の住まい方じゃないもんね。
えへへ、ものさしが見えてきた。
よっしゃ! 要は「暮らしてれば普通そうなる」ならオーナー、「その人だからそうなった」なら借主ってこと?
見事な一行要約。
それを軸に、あとは事例を貼り付けていけばいいわ。
確認クイズ
原状回復ガイドラインにおける負担区分として、賃借人の負担となるものはどれか。
- テレビや冷蔵庫の後部壁面に生じた黒ずみ(電気ヤケ)
- 壁にポスターを貼るために使用した画鋲の穴(下地ボードの張替えが不要なもの)
- 結露が発生していることを認識しながら放置し、拡大させた壁のカビ・シミ
- 日照により変色したクロス
こたえを見る
正解: 3. 結露が発生していることを認識しながら放置し、拡大させた壁のカビ・シミ
結露そのものは建物の構造に起因することもありますが、賃借人がこれを認識しながら賃貸人に通知せず、拭き取り等の手入れも怠って拡大させた場合は、善管注意義務違反として賃借人負担となります。選択肢1・2・4はいずれも通常損耗・経年変化にあたり賃貸人負担です。なお選択肢2と異なり、下地ボードの張替えが必要な釘穴・ネジ穴は賃借人負担となります。