敷金は「誰と誰の間のお金か」で結論が分かれます。貸す人が代わったときと、借りる人が代わったときで、扱いが真逆になるのです。
今日は敷金の応用。
まず、建物が売却されて賃貸人が交代した場合。
敷金はどうなると思う?
うーん…敷金は前の大家さんに払ったんだから、返してもらうのも前の大家さん、じゃないの?
いえ、そこは新しい賃貸人だと思います。
賃貸人たる地位が移転したときは、敷金返還債務も譲受人が承継すると民法605条の2第4項が定めています。
つむぎさんが正解。賃貸人たる地位の移転に伴って、費用償還債務と敷金返還債務は当然に新賃貸人へ移ります。
賃借人の承諾も要らない。
…あ、そっか。
借りてる人からしたら、大家さんが勝手に代わっただけなのに敷金が消えちゃったら、あんまりだもんね。
そう、賃借人を守るための帰結ね。
ただし一つ注意。
未払賃料があれば、それは当然に敷金から充当された残額が承継されます。
満額がそのまま移るとは限らない。
ちょっと待って。
滞納3か月で敷金が2か月分しかなかったら、新しい大家さんに渡る敷金はゼロってこと?
ええ、そうなるわね。
計算問題として出ることもあるから、引き算を忘れないで。
では、逆のパターンを伺いたいです。
賃借人が交代した場合——賃借権が適法に譲渡された場合はどうなりますか。
ここが対比の山場。賃借権の譲渡があったときは、旧賃借人の敷金は新賃借人に承継されません。
賃貸人は旧賃借人に、債務を差し引いた残額を返さなければならない。
えーっ、逆じゃないの? どっちも「人が代わる」なのに、なんで結論が反対になるのさ!
ジャスミンちゃん、落ち着いて? …ましろが思うに、敷金って「この人がちゃんと払うかどうか」を心配して預かるお金だよね。
人が代わったら、心配する相手も別人になっちゃう。
見事な直感。
敷金は賃借人の信用に結びついたお金なの。
だから借りる人が代われば、旧賃借人との精算はそこでいったん打ち切る。
貸す人が代わっても、賃借人の信用は変わらないから引き継ぐ。
つまり——賃貸人の交代は承継する、賃借人の交代は承継しない。
この一行に集約できますね。
うん、それなら覚えられる! 新しい借主は、自分でイチから敷金を入れ直すってことね。
そういうこと。
保証人についても同じ発想が働くわ。
誰の債務を担保しているのか——そこを常に確認する癖をつけて。
確認クイズ
敷金の承継に関する記述として、正しいものはどれか。
- 賃貸人が建物を譲渡し賃貸人たる地位が移転した場合、敷金返還債務は旧賃貸人に残り、新賃貸人には承継されない。
- 賃貸人たる地位が移転した場合、未払賃料があればこれに当然に充当された残額について、敷金関係が新賃貸人に承継される。
- 賃借人が適法に賃借権を譲渡した場合、旧賃借人が差し入れた敷金は当然に新賃借人に承継される。
- 賃借権が譲渡された場合、賃貸人は旧賃借人に敷金を返還する必要はない。
こたえを見る
正解: 2. 賃貸人たる地位が移転した場合、未払賃料があればこれに当然に充当された残額について、敷金関係が新賃貸人に承継される。
賃貸人たる地位が移転すると敷金返還債務も新賃貸人に承継されますが、未払賃料があれば当然に充当された残額についての承継となります。選択肢1は誤りで、承継されるのが原則です。選択肢3・4も誤りで、賃借権が譲渡された場合、旧賃借人の敷金は新賃借人に承継されず、賃貸人は旧賃借人に対して債務額を控除した残額を返還しなければなりません。