排水は「流す」だけの設備ではありません。臭気と害虫を室内に入れない仕組みが、わずか数センチの水に託されています。
排水は3種類。
便所からの汚水、台所や浴室などからの雑排水、そして雨水よ。
公共下水道には、汚水と雨水を同一の管きょで流す合流式と、別々の管きょで流す分流式がありますね。
そのとおり。
合流式は、大雨のときに汚水混じりの水が河川へ放流されてしまうことがあるのが課題ね。
今日の主役は、なあに?
トラップよ。
排水管の途中をS字やP字に曲げて水をためておくの。
この水を封水といって、下水の臭気や害虫、ネズミが室内へ上がってくるのを防ぐのよ。
……たった数センチの水が、境界線なんだね。
詩人ね。
その数センチが試験に出るのよ。封水深は5cm以上10cm以下が標準。
浅すぎると失われやすく、深すぎると汚物が滞留して自浄作用が落ちるの。
よっしゃ、5と10。
覚えた!
封水が失われることを破封といいます。
原因が複数あって、混乱しやすいところです。
整理しましょう。
器具から一気に水を流してトラップ内の水まで吸い出されるのが自己サイホン作用。
排水立て管を大量の水が流れて管内が負圧になり封水が吸い出されるのが誘導サイホン作用——吸出し作用ね。
逆に管内が正圧になって封水が室内側へ押し戻されるのが跳ね出し作用。
長期不使用による蒸発。
そして毛髪や糸くずが水を伝わせる毛細管現象。
この五つよ。
むむむ…吸われるか、押されるか、乾くか、伝うか。
あれ、じゃあトラップを2個つければ、もっと安心じゃん?
……ジャスミンちゃん、それは禁止されています。二重トラップといって、一つの排水系統に直列で二つのトラップを設けると、トラップの間の空気が閉じ込められて、かえって排水が流れなくなるんです。
つむぎさん、完璧ね。
その圧力変動そのものを抑えるのが通気管。
排水管に空気を出入りさせて圧力を大気圧に近づけ、封水を守るの。
立て管頂部を延長して大気に開放する伸頂通気方式、通気立て管を設ける方式、複数の器具をまとめて保護するループ通気などがあるわ。
空気の逃げ道か。
ストローを指でふさぐと、水が落ちてこないもんね。
ふふ、いい実験ね。
最後に屋外を少し。
汚水系統のインバート枡は底の半円形の溝で汚物を滞留させずに流し、雨水系統の溜め枡は底の泥だまりで土砂を沈殿させるの。
厨房排水には油脂を分離するグリース阻集器、下水道が未整備の地域では浄化槽が汚水や雑排水を処理するわ。
確認クイズ
排水・通気設備に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- トラップの封水深は、20cm以上30cm以下が標準とされる。
- 一つの排水系統に二つのトラップを直列に設ける二重トラップは、排水を確実にするため推奨される。
- 封水が失われる破封の原因には、自己サイホン作用、誘導サイホン作用、跳ね出し作用、蒸発、毛細管現象がある。
- インバート枡は、底部に泥だまりを設けて土砂を沈殿させるもので、雨水系統に用いられる。
こたえを見る
正解: 3. 封水が失われる破封の原因には、自己サイホン作用、誘導サイホン作用、跳ね出し作用、蒸発、毛細管現象がある。
破封の原因には、自己サイホン作用、誘導サイホン作用(吸出し作用)、跳ね出し作用、蒸発、毛細管現象があります。選択肢1は誤りで、封水深は5cm以上10cm以下が標準です。選択肢2も誤りで、二重トラップは禁止されています。トラップの間の空気が密閉され、かえって排水が流れにくくなるためです。選択肢4は名称が逆で、底部に泥だまりを設けるのは雨水系統の溜め枡、底部に半円形の溝(インバート)があり汚水系統に用いられるのがインバート枡です。