管理業者は、預かった家賃を賃貸人に報告する義務を負います。その土台となる発生主義、複式簿記、そして預り金の扱いを、いちばんやさしいところから。
うぅ…会計。
数字。
あたし、細かい計算がいちばん苦手なんだけど…
焦らなくていいわ。
簿記の試験じゃないもの。
考え方の骨だけ掴めば十分よ。
まず発生主義と現金主義の違いから。
先生、質問があります。
現金主義は、お金が動いたときに記録する。
発生主義は、お金が動く前でも記録する——という理解でしょうか。
ほぼ正解。発生主義は、収益や費用をその発生した事実に基づいて計上する考え方。
企業会計原則が採る立場ね。
えへへ、まだピンとこない…。
たとえば、3月分の家賃が3月中に入ってこなかったら、どうなるの?
いい質問。
現金主義なら、入金された月の収益。
でも発生主義なら、3月の収益として計上して、まだもらえていない分を『未収入金』という資産として記録するの。
え、入ってきてないのに『あった』ことにするの? 気持ち悪くない?
逆よ。
入金のタイミングで決めると、たまたま入金が遅れた月だけ赤字に見えてしまう。
事実に即して期間ごとの成績を出すために、発生主義を採るの。
記録の方法は複式簿記ですね。
一つの取引を、借方(左)と貸方(右)の両面から書く。
そう。
そこから決算で二つの表ができる。
一定時点の財産の状態を示す貸借対照表と、一定期間の儲けを示す損益計算書よ。
……先生。
管理業者が預かってるお金って、その表のどこに入るの? 自分の売上じゃないよね?
ましろさん、それこそが第9章の芯よ。
入居者から預かった家賃も、返還を要する敷金も、管理業者にとっては預り金——つまり負債。
売上ではないの。
賃貸人に送金して、はじめて減る。
預かってるだけだから、いつか返す。
だから負債か。
……あ、これ、分別管理の話と繋がってる!
そのとおり。
お金の実体は口座で分け、帳簿では勘定で分ける。
そして賃貸人には収支報告書で、収入・支出・送金額をきちんと報告する。
会計は、その報告を支える土台なのよ。
確認クイズ
発生主義による会計処理として、正しいものはどれか。3月分の家賃が3月末までに入金されなかったケースで考える。
- 実際に入金があった月の収益として計上する
- 3月の収益として計上し、未収入金として資産に計上する
- 入金されていない以上、収益としても資産としても計上しない
- 入金されるまでの間、預り金(負債)として計上する
こたえを見る
正解: 2. 3月の収益として計上し、未収入金として資産に計上する
発生主義では、収益はその発生した事実に基づいて計上します。3月分の家賃は3月に発生しているため3月の収益とし、未回収分は未収入金(資産)として計上します。選択肢1は現金主義の処理です。選択肢4の預り金は、管理業者が入居者から家賃等を預かっている場面などで用いる負債の勘定であり、この設問の処理とは異なります。