賃貸経営は数字で語れなければ始まりません。難しい計算は不要です。式の意味さえ分かれば、危ない計画はすぐ見抜けます。
今日は数字の日。
まず表面利回り、グロス利回りとも言うわ。年間家賃収入 ÷ 投資額。
1億円の物件で年間家賃収入800万円なら、8%ね。
うぅ…計算だ。
でも、これくらいなら…8%! なんかお得そう!
…待ってください。
その式には運営費用が入っていません。
管理費も、修繕費も、税金も、まるごと無視した数字ですよね。
つむぎさん、そこよ。
だから実質利回り——ネット利回り、NOI利回りとも呼ぶ——を使います。(年間家賃収入 − 運営費用) ÷ 投資額。
さっきの物件で運営費用が年200万円なら、(800 − 200) ÷ 10,000 = 6%。
8%が6%に…。
表面のほうは、ちょっと見栄えを良くした数字なんですね。
広告で強調されるのはたいてい表面利回りよ。
この分子、つまり年間家賃収入 − 運営費用のことをNOI、純収益といいます。
賃貸経営の実力値ね。
借入れをしている場合には、DSCRという指標もありましたね。
借入金返済余裕率。元利金返済前の純収益 ÷ 元利金返済額。
純収益600万円で年間の返済額が500万円なら、600 ÷ 500 = 1.2よ。
1.0を割ったら、どうなるの?
純収益だけでは返済を賄えないということ。
足りない分は自分の貯金から出すしかない。
だからDSCRは1.0を上回っている必要があるの。
ここは絶対に落とせません。
…先生。
借りたお金の元本を返すのは、費用にならないんですか?
ましろさん、それは会計の一番おもしろいところ。借入金の元本返済は、支出だけれど費用にはならない。
逆に減価償却費は、費用だけれど支出を伴わない。
この二つがあるから、帳簿の利益と手元に残るお金はズレるのよ。
え、黒字なのにお金がない、みたいなことが起きるってこと? マジで!?
…逆もあり得ますね。
帳簿は赤字でもキャッシュフローは回っている、という状態も。
どちらも起こります。
だから利益とキャッシュフローは分けて見る。
最後に価格の話。
収益から価格を求める方法が二つあって、直接還元法は一期間の純収益 ÷ 還元利回り。DCF法は各期の純収益と将来の売却価格(復帰価格)を現在価値に割り引いて合計します。
借入れの比率を示すLTVも、安全性の目安になりますね。
そう、借入金額 ÷ 不動産価格。
高いほどレバレッジは効くけれど、余裕はなくなる。
そして最後の一つ。長期修繕費用を必ず収支計画に織り込むこと。
10年後の大規模修繕を計算に入れていない事業計画は、絵に描いた餅です。
確認クイズ
総投資額1億円、年間家賃収入800万円、年間の運営費用200万円の賃貸物件がある。この物件の実質利回り(ネット利回り)として正しいものはどれか。なお、借入れはないものとする。
- 6%
- 8%
- 2%
- 10%
こたえを見る
正解: 1. 6%
実質利回りは(年間家賃収入 − 運営費用) ÷ 投資額で求めます。(800万円 − 200万円) ÷ 1億円 = 6%です。選択肢2の8%は運営費用を考慮しない表面利回り(800万円 ÷ 1億円)であり、広告等で強調されがちですが実態を表しません。