クレーム対応に必殺技はありません。あるのは原則だけです。迅速に動き、事実を確かめ、記録を残す。この三つを崩さないことが最大の防御になります。
先生、「隣の音がうるさい」って苦情が来たら、まず何すればいいの?
いい実践的な問いね。騒音は苦情の筆頭よ。
最初にやるのは事実関係の確認。
いつ、どのくらいの時間、どんな種類の音が、どの部屋から。
ここを飛ばして動くと、必ずこじれます。
生活音を完全になくすことはできませんから、受忍限度——社会生活上、我慢すべき限度を超えているかどうか——という考え方で判断することになりますね。
そのとおり。
足音、話し声、洗濯機。
ある程度はお互いさま。
だからどちらか一方を最初から悪者にしない。
双方の言い分を聞くのが鉄則よ。
…苦情を言ってきた人の話だけで動くと、言われた側の方が傷ついてしまう…かもしれないですね。
そう。
初期対応の原則をまとめるわね。迅速に対応する。
事実を確認する。
記録を残す。
感情的にならない。
安易に断定も約束もしない。この五つ。
ペットの無断飼育は? 契約違反なんだから、すぐ追い出せるんじゃん?
…ジャスミンさん、そこは第4章でやりました。
契約違反であっても、直ちに解除できるとは限りません。信頼関係が破壊されたと言えるかで判断されます。
つむぎさんの整理が正確ね。
まずは是正を求め、経過を記録する。
そのうえで改まらなければ次の段階へ、という順序を踏みます。
上の階からのお水漏れは、どうなるんですか。
天井から、ぽたぽた…
漏水は原因の切り分けが命よ。専有部分の給排水管からなのか、共用部分の配管からなのか。
前者なら上階の入居者側の問題になりうるし、後者なら建物側、つまりオーナーの責任領域になる。
工作物責任の問題にも発展します。
原因が判明する前に「あなたの責任です」と伝えてしまうのは、危険ということですね。
決定的に危険。調査中は調査中と伝える。
それが誠実さよ。
そしてもう一つ大事なこと。
管理業者が判断してよい範囲は、賃貸人から与えられた権限の中だけ。それを超える事項は、賃貸人に報告して指示を仰ぐ。
でも、火事とかガス漏れは、報告してる場合じゃなくない?
そこは例外。
原則として賃借人の承諾なく居室に立ち入ることはできません。
承諾なき立入りは住居の平穏を害します。
ただし火災・ガス漏れ・漏水など緊急やむを得ない場合には立ち入れる旨を、あらかじめ契約で定めておくのが実務よ。
…備えてあるから、いざというときに動ける。
契約書って、そのためにあるんですね。
確認クイズ
苦情・クレーム対応に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 上階からの漏水の苦情を受けた場合、原因の調査を待たずに上階の賃借人の責任である旨を申出人に回答すべきである
- 騒音の苦情については、申出人の主張のみに基づいて、相手方の賃借人に是正を求めれば足りる
- 漏水やガス漏れなど緊急やむを得ない場合を除き、賃借人の承諾を得ずに居室に立ち入ることは原則としてできない
- 管理業者は、賃貸人から与えられた権限を超える事項についても、自らの判断で処理してよい
こたえを見る
正解: 3. 漏水やガス漏れなど緊急やむを得ない場合を除き、賃借人の承諾を得ずに居室に立ち入ることは原則としてできない
居室への立入りは、原則として賃借人の承諾が必要であり、緊急やむを得ない場合の立入りは特約で定めておくのが実務です。選択肢1は原因確定前の断定であり不適切。選択肢2は双方の言い分を聞くという原則に反します。選択肢4も誤りで、権限を超える事項は賃貸人に報告して指示を仰ぐ必要があります。