入居審査は、貸す側の不安と、住まいを求める人の権利がぶつかる場面です。管理士の倫理観が最も試されるところでもあります。
入居申込書に何を書いてもらうか、から始めましょう。
氏名・住所・生年月日・連絡先、勤務先と勤続年数、収入、家族構成、緊急連絡先、そして連帯保証人の情報。
収入まで書くんだ…ちょっと踏み込みすぎじゃない?
見ているのは一点だけ。賃料を継続して支払えるか。
だから収入を尋ねるのには理由がある。
逆に言えば、その目的以外に使ってはいけないということでもあるのよ。
本人確認書類の確認、勤務先の確認、保証人や家賃債務保証会社の審査。
ここまでが審査の中身ですね。
…あの。
外国の方だから、という理由でお断りするのは…だめですよね。
絶対にだめ。国籍や障害の有無、高齢であることなどを理由とする不当な差別的取扱いは、してはなりません。
これは実務上の配慮という以前に、人権の問題です。
でも…オーナーさんが「不安だ」って言ったら、どうするの?
その不安を具体的な事実に分解するの。
言葉が通じるか。
保証はあるか。
緊急時に連絡が取れるか。
それぞれに、多言語の資料、家賃債務保証会社、緊急連絡先という仕組みの答えがある。属性で切るのではなく、仕組みで解く。
それが専門家の仕事よ。
…はい。
倫理憲章の「公正と中立性の保持」にも、まっすぐつながる話ですね。
法律の裏づけもあるわ。障害者差別解消法は、事業者が障害を理由として不当な差別的取扱いをすることを禁じているの。
そして2024年4月1日からは、障害のある人から求めがあったときに、負担が重すぎない範囲で対応する合理的配慮の提供が、事業者にとっても努力義務から義務に変わったわ。
筆談で説明する、書類を読み上げる、といった対応ね。
ええと、反社会的勢力の排除という条項も、契約書で見た気がします。
よく覚えていたわね。
暴力団員等でないことを表明・確約させ、違反した場合には契約を解除できる旨を定めます。
これは差別ではなく、反社会的勢力との関係遮断という社会的要請に基づくもの。
区別して理解して。
契約手続についても伺いたいのですが。
入居前の重要事項説明は、誰が行うのでしょうか。
賃貸借契約の重要事項説明は、媒介や代理をする宅地建物取引業者が、宅地建物取引士をして行うものよ。
宅建業法35条ね。
マジで!? 重要事項説明って、この試験で何回も出てきたやつだよね? 同じもの…じゃないの?
別物。
三つあると思って整理して。
①宅建業法35条の重要事項説明(入居者向け・宅建士)、②管理受託契約の重要事項説明(オーナー向け・賃貸住宅管理業法13条)、③特定賃貸借契約の重要事項説明(オーナー向け・同法30条)。
相手も根拠条文も違うわ。
…そして、お部屋の鍵をお渡しするとき。
写真を撮っておくと、あとで役に立つ…ですか?
ましろさん、それが今日一番の実務ね。入居時のチェックシートと写真。
既にあった傷を記録しておけば、退去時の原状回復トラブルの多くは、そもそも起きないの。
確認クイズ
入居審査および契約手続に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 外国人であることのみを理由として、一律に入居申込みを断ることは差し支えない
- 入居審査で取得した勤務先や収入の情報を、審査の目的以外に利用してはならない
- 宅地建物取引業者が賃貸借の媒介をする場合、契約成立前に宅地建物取引士をして重要事項説明を行わせなければならない
- 入居時に室内の状況を写真とチェックシートで記録しておくことは、退去時の原状回復に関する紛争の防止に役立つ
こたえを見る
正解: 1. 外国人であることのみを理由として、一律に入居申込みを断ることは差し支えない
選択肢1が不適切です。国籍や障害の有無等を理由とする不当な差別的取扱いは許されません。貸主の不安には、家賃債務保証会社の利用や緊急連絡先の確保といった仕組みで対応すべきです。選択肢2・3・4はいずれも適切な記述です。なお選択肢3の宅建業法35条の重要事項説明は、管理受託契約や特定賃貸借契約の重要事項説明とは別物である点に注意しましょう。