賃貸経営が相続対策として語られるのはなぜか。評価のしくみを式で理解すれば、その理由と限界の両方が見えてきます。
今日は相続税から。
まず入口の式ね。
相続税の基礎控除は、3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数。
課税価格がこれを超えた分に税がかかります。
法定相続人が3人なら、3,000万円 + 1,800万円で4,800万円。
ここまでは非課税、という理解で合っていますか。
そのとおり。
ではここからが本題。
同じ1億円でも、現金で持つのと賃貸住宅にして持つのとでは、相続税評価額がまるで違うのよ。
同じ1億円なのに、値段が変わるのぉ? 不思議です…
現金は額面どおり1億円と評価されます。
でも土地と建物には評価のルールがあって、しかも人に貸していると、さらに下がるの。
まず土地。
貸家を建てた土地を貸家建付地といいます。
式はこう。自用地としての評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)。
うぅ…かけ算が三段重ねだ。
頭が追いつかないよぉ。
落ち着いて。
要は「貸しているぶん、地主が自由に使えない」から差し引くという話です。
ちなみに借家権割合は全国一律30%でしたよね。
ええ、借家権割合は30%。
借地権割合は地域ごとに路線価図で示されます。
そして建物。
貸している建物は貸家として、固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)で評価されます。
…あの、賃貸割合って、空いているお部屋が多いと下がっちゃうんですか?
そこに気づけたら上出来よ、ましろさん。
賃貸割合は、賃貸されている部分の床面積の割合。空室が多いほど賃貸割合は下がり、評価減も小さくなるの。
「建てただけ」では効かないということ。
土地についてはもう一つ、小規模宅地等の特例がありますね。
ええ。
賃貸経営に関わるのは貸付事業用宅地等。
要件を満たせば200㎡までの部分について50%減額されます。
居住用の330㎡・80%とは、面積も割合も違うから混同しないでね。
よっしゃ、分かった気がする! じゃあ借金してアパート建てまくれば、税金ゼロにできるんじゃん?
…そこが一番危ないところ。
借入金は債務として控除されるけれど、返すのは相続人よ。
空室が続けば返済は家賃で賄えず、売ろうにも値がつかない。
税を減らして家計を壊しては本末転倒です。
…節税のために、暮らしが傾いたら意味がない、ですね。
そのとおり。
それに税制は改正されます。
ここで学んだのは考え方の骨格。
実際の判断では必ず最新の制度を確認し、税理士などの専門家に相談すること。
管理士としての誠実さは、そこに表れます。
確認クイズ
賃貸住宅と相続税に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 小規模宅地等の特例において、貸付事業用宅地等は400㎡までの部分について80%が減額される
- 小規模宅地等の特例において、貸付事業用宅地等は200㎡までの部分について50%が減額される
- 貸家の相続税評価額は、賃貸割合にかかわらず固定資産税評価額の30%となる
- 相続税の基礎控除額は、法定相続人の数にかかわらず一律3,000万円である
こたえを見る
正解: 2. 小規模宅地等の特例において、貸付事業用宅地等は200㎡までの部分について50%が減額される
貸付事業用宅地等は、要件を満たせば200㎡まで50%減額されます。選択肢1の400㎡・80%は特定事業用宅地等の数値です。選択肢3は誤りで、貸家の評価は「固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)」であり、賃貸割合が下がれば評価減も小さくなります。選択肢4も誤りで、基礎控除は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。なお税制は改正されうるため、実務では必ず最新情報を確認してください。