相続税・贈与税と賃貸経営 — 貸家建付地・貸家の評価減と、借入れの落とし穴

現金のままより、賃貸住宅にした方が相続税の評価額は下がります。貸家建付地・貸家の評価と小規模宅地等の特例を押さえたうえで、「節税だけを目的とした借入れ」の危うさまで見ていきます。

編集・検証: 賃貸不動産経営管理士スタディ編集部 公式情報: 一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会 制作・検証方針

賃貸経営が相続対策として語られるのはなぜか。評価のしくみを式で理解すれば、その理由と限界の両方が見えてきます。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

今日は相続税から。
まず入口の式ね。
相続税の基礎控除は、3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数。
課税価格がこれを超えた分に税がかかります。

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

法定相続人が3人なら、3,000万円 + 1,800万円で4,800万円。
ここまでは非課税、という理解で合っていますか。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

そのとおり。
ではここからが本題。
同じ1億円でも、現金で持つのと賃貸住宅にして持つのとでは、相続税評価額がまるで違うのよ。

雪村 ましろ(びっくり) 雪村 ましろ

同じ1億円なのに、値段が変わるのぉ? 不思議です…

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

現金は額面どおり1億円と評価されます。
でも土地と建物には評価のルールがあって、しかも人に貸していると、さらに下がるの。
まず土地。
貸家を建てた土地を貸家建付地といいます。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

式はこう。自用地としての評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)。

戸倉 ジャスミン(しょんぼり) 戸倉 ジャスミン

うぅ…かけ算が三段重ねだ。
頭が追いつかないよぉ。

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

落ち着いて。
要は「貸しているぶん、地主が自由に使えない」から差し引くという話です。
ちなみに借家権割合は全国一律30%でしたよね。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

ええ、借家権割合は30%。
借地権割合は地域ごとに路線価図で示されます。
そして建物。
貸している建物は貸家として、固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)で評価されます。

雪村 ましろ(普段) 雪村 ましろ

…あの、賃貸割合って、空いているお部屋が多いと下がっちゃうんですか?

香月 リサ 先生(笑顔) 香月 リサ 先生

そこに気づけたら上出来よ、ましろさん。
賃貸割合は、賃貸されている部分の床面積の割合。空室が多いほど賃貸割合は下がり、評価減も小さくなるの。
「建てただけ」では効かないということ。

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

土地についてはもう一つ、小規模宅地等の特例がありますね。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

ええ。
賃貸経営に関わるのは貸付事業用宅地等。
要件を満たせば200㎡までの部分について50%減額されます。
居住用の330㎡・80%とは、面積も割合も違うから混同しないでね。

戸倉 ジャスミン(笑い) 戸倉 ジャスミン

よっしゃ、分かった気がする! じゃあ借金してアパート建てまくれば、税金ゼロにできるんじゃん?

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

…そこが一番危ないところ。
借入金は債務として控除されるけれど、返すのは相続人よ。
空室が続けば返済は家賃で賄えず、売ろうにも値がつかない。
税を減らして家計を壊しては本末転倒です。

雪村 ましろ(しょんぼり) 雪村 ましろ

…節税のために、暮らしが傾いたら意味がない、ですね。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

そのとおり。
それに税制は改正されます。
ここで学んだのは考え方の骨格。
実際の判断では必ず最新の制度を確認し、税理士などの専門家に相談すること。
管理士としての誠実さは、そこに表れます。

確認クイズ

賃貸住宅と相続税に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 小規模宅地等の特例において、貸付事業用宅地等は400㎡までの部分について80%が減額される
  2. 小規模宅地等の特例において、貸付事業用宅地等は200㎡までの部分について50%が減額される
  3. 貸家の相続税評価額は、賃貸割合にかかわらず固定資産税評価額の30%となる
  4. 相続税の基礎控除額は、法定相続人の数にかかわらず一律3,000万円である
こたえを見る

正解: 2. 小規模宅地等の特例において、貸付事業用宅地等は200㎡までの部分について50%が減額される

貸付事業用宅地等は、要件を満たせば200㎡まで50%減額されます。選択肢1の400㎡・80%は特定事業用宅地等の数値です。選択肢3は誤りで、貸家の評価は「固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)」であり、賃貸割合が下がれば評価減も小さくなります。選択肢4も誤りで、基礎控除は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。なお税制は改正されうるため、実務では必ず最新情報を確認してください。

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